[優秀賞]
髙橋日菜|やまがた省エネ健康住宅の快適性とエネルギー利用の実態?やまがた省エネ健康住宅は本当に寒くないの??
山形県出身
三浦秀一ゼミ
山形県では、全国に先駆けて高気密?高断熱の独自の基準を定め、2018年から「やまがた省エネ健康住宅」として普及を進めてきた。やまがた省エネ健康住宅認証制度では、UA値の確認や気流止め施工、断熱材等の施工状況確認、気密試験の結果などにより認定される。UA値の基準値は、HEAT20を参考に作られており、Y-G3は0.23(W/㎡?K)、Y-G1は0.34(W/㎡?K)、Y-G2は0.46(W/㎡?K)で、国が定めるZEH 基準0.60(W/㎡?K)よりも高水準である(図1)。また、やまがた省エネ健康住宅の定義の一つに「最も寒い時期の就寝前に暖房を切って翌朝暖房を稼働させない状況でも室温が10℃を下回らない断熱性能と気密性能を持つ住宅」というものがある。しかし、10℃を下回らないというのは、このくらいのUA値で、このくらい断熱して、このくらいの気密で隙間がなければ、10℃は下回らないだろうと推定されているだけで、あくまでも曖昧なイメージの話である。本研究の目的は、やまがた省エネ健康住宅に認証されている住宅の実際の室温を調査することで、本当に10℃を下回らない住宅になっているのかを検証し、イメージを具体的な数値に換え、より説得力を持たせることにある。
温度データやエネルギーデータ、アンケートを分析した結果、断熱性能が省エネ基準を超えていれば、10℃を下回ることはほとんどないことがわかった(図2)。より断熱性能の高い健康住宅では、さらに高い温度基準も下回らずに、暖かい住宅で快適に暮らすことができる傾向にある。また、脱衣場でヒートショックを防止するためには、断熱性能を高めるだけでなく、廊下のない住宅をプランニングすることが重要である(図3)。
三浦秀一 教授 評
2018年に山形県は住宅の省エネ性能基準として、全国の都道府県ではじめて国を上回る基準を設けた。髙橋さんは、この基準で建てられた住宅と比較対象の住宅、合わせて81棟を調査して、実際の温度を測り、エネルギー消費量を分析した。3年の冬から調査に取り組み、1年間にわたり、そのデータの分析を行ったことになる。データの分析は地道な作業であるが、様々な仮説を立てながら数え切れないほどの検証を行い、断熱性能だけでなく、廊下のない住宅は暖かくなるという一つの結論をデータで導いた。決して驚くような結論ではなく、なんとなくは想像される結果ではあるが、それがデータで示されたということはなかった。こうした地道な作業とデータが確固たるデザインを生み出す原動力となるであろう。東北で芸術と工学の融合を目指す本学ならではの卒業研究である。