株式会社山形テレビでディレクターを務める本田祐衣(ほんだ?ゆい)さん。コンテンツ担当として、山形の情報番組制作などを手掛けています。取材先へのアポ取りからディレクション、映像の編集作業まで、幅広く業務を行うことが求められるテレビ局での仕事。そこで活きたのが、大学時代に一人で何役も掛け持ちしながらつくり上げた卒業制作の経験だったと言います。そんな本田さんに当時の思い出や、ローカル局で働きたいと考えた理由を伺いました。
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地方のテレビ局だから発信できること
――本田さんは入社4年目とのことですが、現在はどのようなお仕事を担当されていますか?
本田:入社後、総務部に2年間所属した後、今の制作部に配属されました。コンテンツ担当になって2年目になるんですけど、現在は『やまがたCity情報』という山形市の取り組みを紹介する番組をメインにやっています。
あとは少し前まで山形県内のSDGs推進企業を学生が訪問する『ヤマガタSDGsミライラボ』という番組も担当していて、その時は芸工大の学生さんにもご協力いただくようなところが多々ありました。
本田さんがディレクションした番組『ヤマガタSDGsミライラボ』。本学の学生も多数出演。
仕事内容は番組にもよりますが、取材先さんへのアポ取りや打ち合わせ、カメラマンさんに付いてもらってのディレクション業務、また編集作業が伴う時もあります。基本的にはその一連の流れが仕事のメインになりますね。それから『山形ふるさとCM大賞』のディレクターも今回務めることになって、その準備をしているところです。
――山形テレビさんに入社しようと思ったきっかけは?
本田:高校の時から「テレビ局に入ってみたい」っていうのはずっとあったんですけど、大学生の時に山形テレビで、中山きんにくんとかの筋肉タレントが旅をする番組をやっていて、「あ、山形でこういうことできちゃうんだ。ローカルだけど楽しそう!」って思ったんですね。正直きっかけはそれなんですけど、実は会社の面接でも言ってなくて…(笑)。
もともとそういう楽しい番組が好きで、同じテレビ朝日系列でHTBという北海道のテレビ局が制作している『水曜どうでしょう』も好きなんです。それで以前から何となく、「地方だからできることがあるんじゃないか」っていうのがあって。もちろん華やかなキー局にも憧れますし、東京の制作会社を受けたこともありますけど、やっぱり自分でやりたいことを場所関係なくやってみたい、っていう思いはありましたね。
――その後、そういった番組づくりに関わることはできましたか?
本田:まだ企画してディレクションまで一括して、っていう大きいものはないんですけど、バラエティ番組の一部のコーナーを担うことがありまして、そこで映像学科時代にお世話になった、恩師の林海象(はやし?かいぞう)さん※に出ていただいたことがあるんです。ちょっとした寸劇もしてもらって、それはすごく思い出深いですね。海象さんも「すごい嬉しい」って言ってくださって。ネタもちょうど“山形と映画の関係性について”で、それを楽しく伝えるものだったんですけど、山形で撮影された映画っていっぱいあるんですね。そこを聖地巡礼して、最後に山形で映画を撮る良さを海象さんに聞く、みたいな内容で。あと同じ番組内で使うイメージイラストを映像学科時代の同級生に描いてもらったんです。映画は著作権があって写真が使えないので。そんな感じで好き勝手やらせてもらえて面白かったですし、嬉しかったですね。
※映画監督、脚本家。2023年度まで本学映像学科教授。
あと『ヤマガタSDGsミライラボ』を担当していた時は、自分が興味ある企業を探して、アポを取ってこちらの思いを伝えて、また出演してくれる学生さんも探して、っていうことをしていて、大変ではあったんですけどそれも良い経験値になりました。
私は宮城県出身で外様なので、「地元出身者だったら、知ってることももっと多いんだろうな」って思うことがあるんですね。でも、興味は外様の方が湧きやすいような気がしていて。当たり前じゃないから気付けることもあるのかな、と。そういう点では、山形の魅力をどんどん掘っていける立場なのかもしれません。
――制作部のお仕事に問われる力とは?
本田:とりあえず一貫して全部やらないといけないので、単純にやり切る力は必要だと思います。本当にカメラを回す以外は全部やる、みたいな感じなので。それからどうしても人と関わる仕事なので、出演しているアナウンサーや取材先の方やカメラマンなど含め、なるべく皆さんが気持ち良くできるための気遣いというのを勉強しているところです。
コンテンツ担当の中では一番下っ端なので、もう聞かないと不安で仕方なくて。いろんな人に確認するだけタダだと思って、しつこいぐらいに聞くようにしています。それに対して根気強く教えてくれる先輩方がいるというのはすごくありがたいことですし、逆に「自由にやって良いよ」と言われたところは自分でいろいろ考えるようにしています。
つくりたいものに向かって走り抜けた学生時代
――芸工大の映像学科へ進学を決めた理由は?
本田:高校の時からテレビ局にはすごく入りたかったので、いろいろ考えて「映像学科だったらテレビ局の道もあるかな」というところで入試を受けました。オープンキャンパスにも一度友人と行って、そこで市町村のCMみたいなものを見て、「課題が映像っていいな」と思ったこともきっかけになりました。あと、おばあちゃんちが山形で、小さい時から年に何回も行き来していたので、芸工大は大学を選ぶ時の選択肢に入れやすかったですね。
映像そのものに興味を持つようになったのは中学からだと思います。所属していた吹奏楽部で映像をつくる機会があって。アニメの『名探偵コナン』のテーマ曲をやるからそれの映像をつくろう、みたいな話になったんです。よくある、誰かを主人公にして誰かを犯人にして、みたいな。それをテーマ曲と同じ2分半とかに収めてつくって、体育館で流しながら演奏したらみんなにすごく褒められて。その時は小さいビデオカメラを持ってきて、青いブレザーを探して、折り紙で蝶ネクタイをつくって、一人の男の子を犠牲にして撮影しました(笑)。また、高校に進んでからも引き続き吹奏楽部に入って演奏会の全部を演出したり、小さいiPhoneで撮影してふざけた動画をいっぱいつくったりしてました。もしその頃TikTokがあったら、いろんな編集ができただろうなって思います(笑)。
――その後、芸工大の学びからどんなことが得られましたか?
本田:今は制作部でほぼ全部一貫してやっている、という話を先ほどしましたが、実は大学の時にも同じことをしていたというか。それこそアポ取りから監督から編集から音楽から…もう、今と同じですよね(笑)。カメラを回す以外、全部やっていたので。それで何とか走り切ったのが卒業制作で、今考えると本当に同じことしてたなって思います。
――卒業制作は、あえて一人でやり切りたかった…?
本田:何なんでしょうね…(笑)。自分でもよく分からないので“多分”なんですけど、卒業制作について2年くらい構想してたんですね。なので「絶対にやりたい!」みたいなのがあって、「だったら一人でやっちゃおう」ってくらいのアドレナリンが出てたんだと思います。私がつくりたかったのは1時間の映画で、そうなると時間も掛かりますし、人数も要りますし、やることも多いですし。それこそ、絶対にやり遂げたかったんだろうな、と。ただ、軸となるところは一人でやってましたけど、もちろん一人でやったとは思ってなくて。ずっと手伝ってくれていたカメラマンの子とか、私の作品を優先してやってくれた子とか、主演を務めてくれた子もそうですし、関わる人が多かった分、最優秀賞をもらった時はすごくほっとしました。「やったぞ!」というよりも、「みんなが報われて良かった」という感じでしたね。
――また、大学生活で思い出に残っていることは?
本田:大学で友達がたくさんできたので、夜中まで一緒に課題をやったり、みんなで夜中足湯に行って、そこでMacBookを開いて課題やったり。お湯の中に落としたら終わりなんですけどね(笑)。夜中も入れる足湯が南陽市にしかなくて、よくそこまで友達と行ったりしてました。
――今後に向けて思い描いているものがあれば教えてください
本田:私、ゆるキャラが好きなんですよ。市町村に絶対いるじゃないですか。それってすごいことだと思うので、何かちょっと特集はしてみたいなって思います。芸達者な着ぐるみがいろいろいるので(笑)。あとは大学の時に脚本を書いていたので、例えばドラマ仕立てのような感じで、演出で活かせるところがあったらいいなと思っています。
――それでは最後に受験生へメッセージをお願いします
本田:今はTikTokとかもありますから、映像の仕組みについては私たちが高校生の時より全然理解できる環境だと思うんです。それはすごく素敵なことなので、使える無料のツールは全部使っちゃっていいでしょうし、私は映像のことをほぼ知らずに芸工大に入りましたが、それでも最終的にはやりたいことができるまでになれたので、あまり気負わずに入学してもらった方がいいかな、と。最初は自由に写真とかアニメとかCGとか映像とか、全部に触れていろいろ経験してみて、その中で何かやりたいことを見つけられたら良いんじゃないかなと思います。
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とにかく、昔から楽しいことが大好きだったという本田さん。一方で、「テレビは信用性が一番大事なメディア。その分、責任も問われるし、自分の好きなことだけを好きなようにというわけにはいかないけれど、テレビやラジオが持つ“発信する義務”はこれからもきっと続いていくもの。そこに自らも携わっていきたい」と話してくれました。今後も増えていくであろう、本田さんが担当する番組の数々。『水曜どうでしょう』のように、ローカルの枠を超えた人気作がその手から生み出される日も近いかもしれません。
(撮影:渡辺 然、佐藤鈴華 取材:渡辺志織、入試課?須貝) 映像学科の詳細へ東北芸術工科大学 広報担当
TEL:023-627-2246(内線 2246)
E-mail:public@aga.tuad.ac.jp
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