design:鈴木敏志(JEYONE)
美術館大学構想室企画展
西雅秋|彫刻風土
東北芸術工科大学では、2006年度のアーティスト・イン・レジテンスおよび企画展作家として、彫刻家・西雅秋氏を招聘します。西雅秋(1946年広島生まれ)は、埼玉県飯能の山間にスタジオを構え、主に鉄やブロンズなどの金属鋳造によるコンセプチャルな彫刻作品で知られています。二宮金次郎像や金精さま(木製の奉納男根)、日露戦争の砲弾、弁財天の頭など、日本の歴史や土着信仰に関するアイコンを素材に文明批評的な視点から、物質と時間、人間と自然、個人と社会との根源的な関係性を作品化し続けている彫刻家です。
          自然の作用や共同体の歴史の痕跡をそのまま提示し、彫刻の発生の根本を問うその活動は、昨年、神奈川県立近代美術館葉山分館(2005)において大規模な個展にまとめられ、国際的にも高い評価を受けました。
          『西雅秋|彫刻風土』展では『Innocence』シリーズを中心に、同じ原型を鉄とブロンズでそれぞれ鋳込み併置する過去の作品群を展示するとともに、本学での現地制作として、かつて養蚕に使われた藁の平籠に、西氏が山形滞在中に収集し、石膏に鋳抜いた様々な「カタチ」を、そこに込められたさまざまな意味とともに、渾然一体と積み上げていきます。聖と俗、生と死、男と女、正義と悪、地域性と匿名性など、相対する意味が混ぜられ、混沌とした今日の世界の状況が暗示されていきます。
          さらに、全長7メートルの最上川の川舟に、県内の鋳物屋から収集した仏頭など、山形を象徴する様々な「かたち」を石膏で鋳抜き、大量に積み上げていくという大がかりなインスタレーションを能舞台で発表します。 
- 会期= 2006年10月25日[水]−11月16日[木]
 - (※能舞台設置作品のみ11/27まで展示)
 - 会場=7階ギャラリー/水上能舞台「伝統館」/インフォメーション・パッサージュ
 - 協力=株式会社鈴木鋳造所/株式会社雅仙
 
●関連イベント
- ○ギャラリートーク『生きることを鞄に入れた、ある日の彫刻家』
 - 日本を代表する現代彫刻ウォッチャーとして、20年来〈彫刻家・西雅秋〉の人と作品に関わり続けてきた酒井忠康氏が、『西雅秋|彫刻風土』における風土と彫刻との邂逅を解読していきます。美術史家の知性と彫刻家の感性が交錯する濃密な語りの1時間半。
 - 対談=西雅秋×酒井忠康(本学教授/世田谷美術館館長)
 - 日時=10月27日[金] 17:40−19:00
 - ○舞台公演『彫刻風土|時の溯上』
 - 飯能の山間に工房を拓き、鉄の仙人と評される彫刻家・西雅秋が、山形県大蔵村に棲む異能の舞踏家・森繁哉に出会う。それぞれの領域で、常にラディカルな身体を曝しつづける2つの前衛が、水上能舞台で試みる〈彫刻〉と〈舞踏〉のセッションです。
 - 舞踏=森繁哉(舞踏家/本学教授)
 - 会場=水上能舞台「伝統館」(※作品「彫刻風土|山形」周辺)
 - 日時=10月28日[土] 開演17:30
 - ○文部科学省平成18年度現代的教育ニーズ取組支援プログラム
 - 「芸術とデザインによる廃校活用と地域教育」事業
 - 『西雅秋|彫刻風土 朝日町 '06』
 - 彫刻家・西雅秋が旧朝日町立立木小学校で挑む1週間のワーク・イン・プログレスは、山形で制作した石膏雌型(二宮金次郎像、仏頭、コケシ等)を用いて、学校という「場」の記憶・関係を顕在化させる即興的なインスタレーションとなります。オープン・スタジオ期間中はその制作プロセス自体を公開いたします。
 - 会期=2006年10月29日[日]−11月4日[土] 11:00−18:00
 - 会場=旧朝日町立立木小学校教室内
 - 共同制作=建築・環境デザイン学科元倉ゼミ
 - 協力=朝日町立木地区/あとりえマサト
 - ○オープニング・イベント『CASTING IRON ASAHIMACHI '06|鉄と落下』
 - 『CASTING IRON』は、20mの高さから分銅型の鉄塊を大地に落下させる一瞬の彫刻。5トンの鋳鉄が圧倒的な重量感とともに垂直に落下していく様は、立ち会う者の魂を揺さぶる。
 - 会場=旧朝日町立立木小学校グラウンド
 - 日時=10月29日[日] 14:00−15:00
 
●作家プロフィール
- 1946
 - 広島市可部町(現在の広島市安佐北区)に生まれる
 - 1968
 - 武蔵野美術大学彫刻科に入学
 - 1972
 - 武蔵野美術大学彫刻科を卒業
 - 1979-80
 - アメリカ、バーモント州に滞在
 - 1981
 - 埼玉県飯能市に移り住む
 - 1984
 - びわこ現代彫刻展に出品 第20回神奈川県美術展野外彫刻展で大賞を受賞
 - 1986
 - 第2回東京野外現代彫刻展で優秀賞を受賞
 - 1989-90
 - 武蔵野美術大学派遣研究員としてパリに滞在
 - 1991
 - 第21回サンパウロ・ビエンナーレに出品
 - 第13回神戸須磨離宮公園現代彫刻展で国立近代美術館賞・神奈川県立近代美術館賞を受賞
 - 「語り出す鉄たち─今日の金属彫刻から」展に出品(東京都美術館)
 - 1993
 - 2nd 北九州ビエンナーレ─クロノスの仮面に出品 北九州市立美術館)
 - 第15回現代日本彫刻展で大賞を受賞
 - 1995
 - 「環流─日韓現代美術展」に出品(名古屋市立美術館/愛知県立美術館)
 - 「被爆50周年記念展ヒロシマ以後─現代美術からのメッセージ」展に出品(広島現代美術館)
 - 「50年後 彼らはなぜ戦争を表現するのか」展に出品(徳島県立近代美術館)
 - 1996
 - 「火の起源と神話─日中韓のニューアート」展に出品(埼玉県立近代美術館)
 - 個展「現代作家シリーズ '96 西雅秋展」を開催(神奈川県民ホールギャラリー)
 - 1998
 - 個展「西雅秋 Nishi Masaaki」を開催(広島市現代美術館)
 - 1999
 - 第30回中原悌二郎賞で優秀賞を受賞
 - アーティスト・イン・レジデンスで、デンマークのオーデンセ(ホロフゴ)に滞在
 - 2000
 - アーティスト・イン・レジデンスで、デンマークのコペンハーゲン(ガメルドック)に滞在
 - Transit展に出品(コペンハーゲン)
 - ヘルシンキ2000 テーレ湾アートガーデンに出品(フィンランド)
 - 国際彫刻クワトロエンナーレ リガ2000で大賞を受賞(ラトビア)
 - 大地の芸術祭 越後妻有アートトリエンナーレ2000に出品
 - 2003
 - 第31回長野市野外彫刻賞を受賞
 - 第6回倉吉:緑の彫刻賞を受賞
 - 個展「アートドキュメント2003森の野獣」を開催(金津創作の森・福井)
 - 神奈川県立近代美術館葉山の開館に合わせて、葉山館の庭に《大地の雌型より》が設置される
 - 2004
 - 個展「西雅秋展」を開催(水国ミュージアム島根)
 - アートドキュメント2004 錦帯橋プロジェクトに出品
 - 個展「Re Baltic」を開催(リガ・ラトビア)
 - 2005
 - 第1回武蔵野美術大学建築学科芦原義信賞を受賞
 - 2006
 - 個展「西雅秋展─空と大地と記憶の造形」を開催(神奈川県立近代美術館・葉山)
 - 2006年度芸術選奨新人賞を受賞
 
